アラベスク
発祥:イスラム文化圏
時期:750年頃から1200年頃
フランス語で「アラビア風の」という意味。モスクの壁面装飾にみられるイスラム美術様式の一つ。またそれをモチーフとした模様の事。偶像崇拝を禁じているイスラム教において、紋様によって無限の唯一神アラーの創造を象徴している。 蔓や葉などの植物やアラビア文字のモチーフが、左右対称・反復したデザインの幾何学的装飾模様。唐草模様のルーツともいわれている。
ダマスク
発祥:イスラム文化圏
時期:不明
名称はシリアのダマスクスに由来しており、「ダマスク織」の模様をモチーフにした柄。植物、果物、花柄などを用いたデザイン、色数は少なめで構成される。ダマスク織は、中世初期におけるビザンティン(東ローマ帝国)の絹織物の一つで、イスラムの織物。ヨーロッパではインテリアの定番模様であり、ファッションへの影響も強い。
雷文
発祥:中国
時期:不明
直線による渦巻のような幾何学模様を繰り返した文様。中国において自然界の驚異の象徴としての雷をモチーフにしており、魔除けの効果があるとされる伝統的な文様。古くから陶器、漆器、金工、木彫、建築などに用いられている。能装束の地紋にもあり、荒々しい役柄に多く使われる。一般的にはラーメン鉢の内側などによく見られる。
双喜紋
発祥:中国
時期:11世紀頃
中国語で“双喜纹 shuāngxǐwén”、「喜ぶ」という漢字を二つ並べた文様で、おめでたさを表す。中国では陶器や布、家具などに用いて“双喜临门 shuāngxǐ lín mén”(二つの喜び事がやってくる)、 “喜上加喜 xǐshàng jiāxǐ”(喜びに喜びが重なる)意味を表している。双喜紋の文様を作ったのは北宋の政治家・詩人・文章家の王安石(1021~1086)だと言われている。また、双喜紋は円の中に収まるように変形したり、比較的自由に変化したりすることが多くなっている。
ペイズリー
発祥:インド
時期:19世紀頃
松かさや、菩提樹の葉、ざくろ、ヤシの葉、生命樹等をモチーフとした、ペルシャやインドのカシミール地方を由来とする緻密で色も多彩な模様。またはこれらの模様を使った織物の事。生命力をテーマにしている。日本では勾玉(まがたま)模様や松毬(しょうきゅう)模様とも言われる。兵士が持ち帰った織物を 1800年頃にイギリスのペイズリーで生産されたことによる命名で、ファッションや絨毯、バンダナ等の小物の艶やかな装飾柄として使用され、最近はネイルデザインなどにもみられる。元々は高度な技術を要する織り柄だが、現在はプリント柄としても普及している。カシミヤ・ショールの伝統文様でもあり、カシミール模様などとも呼ばれる。
ゲーリー
発祥:ネパール
時期:不明
スコットランドのフェアアイル柄に似た幾何学的でカラフルな配列のデザインと、厚みのある素材感が特徴的なネパールの伝統的な生地のこと。転じてその柄を指す。特定の民族が作った柄ではないが、市場など現地に深く根づいている。
ハレ・ラマ
発祥:インド
時期:不明
使用民族:ヒンドゥー教徒
ハレ・ラマとは、インドの国教であるヒンドゥー教のマントラ(呪文)の一部であり、「ラマ」はヴィシュヌ教のことを指す。最近のファッション用語では本来の意味をやや離れてお経や神様をデザインした柄の総称になることも。
モン刺繍
発祥:タイ・ベトナムなど
時期:不明 紀元前1500年頃とされている
使用民族:モン族
中国から東南アジアに移住し、「モン族」と名乗った山岳民族の伝統的な刺繍。クロスステッチと藍染めを基本にする工芸品で、象の足跡を象ったと言われる独特の渦巻き模様が特徴的。なお「メオ」とも呼ばれるが蔑称なので注意。
カモフラージュ(カモフラ柄)
発祥:フランス
時期:19世紀
緑や茶色等の自然に存在する色をモチーフとしていて、元は軍隊が風景に紛れ見えにくくする迷彩として作られた柄。最初からフランスではファッションデザインとしても採り入れられていた。色んな地形に合わせたカラーリングやデザインの種類がある。
グレンチェック
発祥:スコットランド
語源:スコットランドのアーカートという地の谷間(グレン)で織られたorグレナカート家を表す柄
千鳥格子(大小組み合わせて味わい深い柄行を出している)をモチーフとしていて、主にウール生地で使われることが多く、男女のスーツ地に多く使われている。
タータンチェック
発祥:スコットランドのハイランド地方
時期:16〜17世紀
語源:不明(フランス語のティルタン、もしくはスペイン語のティレターニャが 語源とする説が有力)
経(たて)と緯(よこ)同色、同本数の多色づかいの格子柄をモチーフとしていて、元はスコットランドの民族衣装に使われていた。スコットランドで氏族を表す紋章や儀式用の飾り章に用いられた。
ノルディック
発祥:北欧
時期:不明
語源:フランス語で北
北欧の伝統的な雪の結晶や針葉樹、星などの幾何学模様をモチーフとしていてセーター等の冬服のデザインとしてよく使われる。
モザイク
発祥:古代ローマ、イスラム建築等各地
時期:紀元前500〜4世紀(?)
語源:ラテン語で芸術的
小さな片を集めた模様がモチーフとなっていて、様々な地域で使われていた手法で、特に壁画や建物の装飾として用いられていた。
アボリジナル
発祥:オーストラリア
時期:不明
多くのドットとその集合により様々な世界を表現する。文字を持たなかったオーストラリアの先住民族が元々動物や食用植物、水がどこにあるかを示すために幾何学的な模様を地面に描いていた。1971年にイギリス人の美術教師ジェフリー・バーデンの指導により、絵具とキャンバスに描かれはじめたのが「アボリジナル・アート」の始まりとされる。
チマヨ
発祥:アメリカ チマヨ村の住民
時期:1700年ごろ
チュロと呼ばれる、毛が長い羊の毛を使って織られるチマヨ織の代表的な柄のひとつ。幾何学的なひし形モチーフが特徴的
アズテック
発祥:メキシコ
時期:不明
メキシコの古代文明であるアステカ風の柄。アステカ神話の登場人物や昆虫、動物などがモチーフになっている。
セラぺ
発祥:メキシコ
時期:不明
使用民族はメキシコ先住民で赤や黄・緑などラテンな雰囲気を放つ明るい柄が特徴。メキシカンボーダー(=メキシコの民族衣装に見られる5つの色をベースにするマルチカラーボーダー)と同義で使われるが、正確には真ん中に穴を開けて上半身を覆うラグのような布=セラペに使われる柄のことを総称したもの。
キストゥ
発祥:スワヒリ
時期:19世紀頃
語源:不明(ある村で悪さをした夫をキストゥを纏った妻がナイフ(Kisu)を持って追い掛け回したところをみた人々が「Kisu Tuu」と言ったことからきたというのも一説)
細かい文様がモチーフとなっていて、花嫁の衣装や特別なときに着用され、メッセージが書いていないのが特徴。幸福になるようにと、願いが込められた細かい伝統模様が整然と並んでいる。ドットやクロスが使われることが多く、ドットは 人の本能、三つ目の目などを意味し、クロスは救急車や救護院に見られるクロス に似ている。2つ合わせて不吉なことや縁起の悪いことから守るという意味があると言われている。
麻の葉
時期:9~11世紀頃(平安) 13〜14世紀頃(鎌倉・室町)に普及
六角形の幾何学模様。麻の葉に似ていることが名前の由来。平安時代から仏像の装飾などに使用されてきた。 麻の成長が速く丈夫であることから、子供が健やかに成長する縁起のよい模様とされる。赤ちゃんの産着(うぶぎ)やお宮参りの襦袢に使う風習もあり、男の子は青、女の子は赤を使用した。
市松模様
時期:3世紀(古墳)
石畳、霰(あられ)、元禄模様ともいう。江戸時代(1741年)、人気歌舞伎役者の佐野川市松の袴(はかま)に用いられていたことが名前の由来である。英語ではチェッカーという。江戸時代以前では石畳模様と呼び分ける事があり、古墳の埴輪や正倉院の染織品などにも見られ、歴史は古い。子孫繁栄や事業拡大など縁起の良い模様として好まれている。2020年の東京オリンピックのエンブレムにも用いられている。
籠目(かごめ)
時期:不明
編んだ竹籠の網目のような文様。邪を払う六芒星に見えることから、魔よけの効果があるとも言われる。伊勢神宮周辺の石灯籠にこの文様が刻まれている。
観世水(かんぜみず)
時期:15世紀頃(室町)
常に変わりゆく無限の様を表わした渦を巻いた水の文様。能楽の観世家が紋に使用したことに由来する。扇や本の表紙などに多く見られる。
亀甲(きっこう)
時期:6〜7世紀(飛鳥・奈良)
名前の通り、亀の甲羅に由来している文様。ハニカム模様とも呼ばれる。 昔から亀は長寿の象徴であり、縁起の良い吉兆文様として多用され、出雲大社の紋にも使われている。亀甲文様には派生文様があり、亀甲つなぎ・亀甲花菱・毘沙門亀甲などが代表的である。平安時代に有職文様として定着し、その後は陶器や着物の小紋に使われた。今でも帯締めや帯地などに使われることが多い。
紗綾形(さやがた)
時期:16世紀(桃山)
紗綾(さや)とは、絹織物の一種。紗綾に卍(まんじ)を斜めにかさねた「万字繋ぎ」(紗綾形)が頻繁に織り出されたことから、紗綾形と呼ばれるようになった。日本では女性の慶事礼装の代表的な文様で、不断長久の意味合いを持つ。
青海波(せいがいは)
時期:7世紀(飛鳥)
「青海波」という雅楽の演目の衣装の柄に使われていることが名前の由来となっている。ペルシャ・ササン朝様式のものがシルクロードを経て、飛鳥時代に日本に伝わったとされる。“無限に広がる波のように”幸せが未来永劫続くように、“海がもたらす恩恵”から平安な暮らしへの願いが込められている。
武田菱(たけだびし)
時期:(菱文様は)紀元前14000〜3世紀(縄文)
小紋柄の一つで、四つの菱形を菱形に組み合わせた柄のこと。 ひし形を分割した紋を「割り菱」と呼んだが、そのなかでも武田菱は、菱間の隙間が狭いのが特徴である。武田信玄の家紋。武田菱という名前が定着したのは江戸時代である。
鱗
時期:紀元前4世紀〜3世紀(弥生)
鱗をモチーフに二等辺三角形を上下左右に連続して規則正しく並べた模様。その歴史は古く、弥生時代中期頃の銅鏡や、古墳の壁画や土器にも使われている。日本では厄除けの文様として使うようになった。(蛇の鱗を連想することから、脱皮→厄を落とし再生する、という考えに基づく。)
矢絣(やがすり)
時期:11世紀(平安中期)
矢羽根を繰り返した模様で、本来は矢羽模様の絣をさしていた。日本では古くから和服や千代紙などに使われていた。射た矢が戻ってこないことから、結婚時に持たせる縁起柄である。英語ではアロー・ストライプという。