おにぎりの成り立ち



おにぎりはご飯を握ればおにぎりになるのでしょうか? おにぎらずは握っていませんが、おにぎりの一つとして考えられています。 日本おにぎり協会によるとおにぎりの定義は炊飯米のみまたは炊飯米と何らかの具材を組み合わせた料理です。 三角や俵形など形は様々あることから、おにぎりは形ではなく蒸した米を使って塊にしたものがポイントです。 では、いつからおにぎりは存在するのでしょうか? 1987年11月、石川県にある「杉谷チャノバタケ遺跡」から円錐状の「チマキ炭化米塊」が出土し、 弥生時代からおにぎりが存在していたのではないかと考えられています。

おにぎりの歴史

弥生時代 紀元前300年から西暦250年頃
1987年石川県にある遺跡「杉谷チャノバタケ遺跡」から円錐状のチマキ炭化米塊が出土し日本で初めてのおにぎりと言われています。 単子葉植物の葉の圧痕が残っていて、調理されたやわらかい状態のご飯であったことと葉っぱに包まれていたことからおにぎりなのではないかとされています。 弥生時代中期から後期は大規模な水稲耕作が大陸から日本列島に伝わって定着したことが推測されています。 神への捧げ物でもあったと言われています。しかしおにぎりと確実に証明できるものは存在していません。

平安時代 794年から1185年頃
この頃のおにぎりは「屯食」(とんじき)と呼ばれていました。強飯(こはいひ)を卵型に握っり固めたのであったと言われています。 貴族の宴がある時に宿の宿直(とのい)や下級役人へ与える食べ物でした。労いや感謝の意味を持っており、 その本質は弥生時代から2000年近く変わっていない可能性があり、平安時代でもおにぎりは儀礼性を持った食べ物であったと言われています。

鎌倉時代 1185年から1333年頃
1221年の永久の乱で東軍(鎌倉政府側)の武士に兵糧として梅干し入りのおにぎりが配られた記録が残っています。 梅干しおにぎりは800年前からあったのです!それまでのおにぎりは基本的に米を固めただけでしたが、具が入ったことにより、一気に現代のおにぎりへと近づきました。 それまでの儀礼的な植物であったおにぎりを立場を実用的な大衆食へと変えるきっかけになりました。

戦国時代 1467年〜1590年頃
おにぎりが兵糧として特に重宝されるようになります。戦国時代に主流だったのは間引き菜と米を一緒に炊いた菜飯おにぎりです。 そのおにぎりに塩や味噌を塗ることもあり、塩分による殺菌効果を目的としたものだと思われます。また豊臣秀吉が賤ヶ岳の戦いの時に武士たちにおにぎりを配って強行軍を行なったという言い伝えがあります。 エネルギー源としてのおにぎりの性格を物語っており、兵糧として重宝されていたことがわかります。 さらに新潟県の妙高市の鮫ヶ尾城址から直径4〜6cmの球状で人の手で握られた痕跡のあるおにぎりが出土し、おにぎりであることが確認されました。俵型おにぎりはこの頃から現れたと言われています。

江戸時代 1603~1868年
江戸時代に入ってからはおにぎりは多様化し、庶民に普及していきます。おにぎりに海苔を巻くようになったのも江戸時代からです。 今では定番である三角形のおにぎりは8代目将軍徳川吉宗をもてなすべく、三角のおにぎりを丸い盆に3つ並べ徳川家の家紋(葵紋)を再現したところ吉宗が大いに喜んだという説もあります。 またこの時代は弁当が普及し始めます。そこでもやはり持ち運びやすい、見栄えが良いなど様々な理由からおにぎりが重宝されました。

明治時代
1885年(明治18年)、日本鉄道宇都宮駅校内で地元旅館が日本初の駅弁を販売します。その弁当の中身が黒胡麻をまぶした梅入りおにぎり2つとたくあん2枚が竹の皮に包んであるものでした。 また、1989年(明治22年)には山形県鶴岡町の私立忠愛小学校で品行児童を対象に日本で初めて給食を実施します。当時の献立は、おにぎり、鮭、漬物でした。 このようにおにぎりが日本人にとって当たり前のものになっていったことがわかります。

昭和〜平成時代
1976年(昭和53年)セブンイレブンがパリッコフィルムを考案。パリパリのりの手巻きタイプのおにぎりを商品化します。 以降、おにぎりがコンビニエンスストアの主力商品に。2013年には「和食」が自然を尊重する日本人の心を表現したものであり、伝統的な社会習慣として世代を超えて受け継がれているとし、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。

おにぎりは日本だけ? おにぎり文化

世界で米を食べる文化がある国はありますが、おにぎりはなぜ日本でしか普及しなかったのでしょうか。 そこには米の品種の違いや食文化の違いが考えられます。例えば南アジアや東南アジアの大部分で食べられているインディカ米やジャポニカ米などはパサパサしているためおにぎりとして握ることができません。 中国や朝鮮半島などでは粘り気のあるお米が食べられていますが、冷えた米を食べる習慣がなくおかずと一緒に食べることが当たり前です。 米を食べる文化があったとしても、おにぎりは世界に普及することがなかったため日本の伝統食の一つになったと考えられます。 コンビニやスーパーに当たり前におにぎりがあるのは日本だけではないでしょうか? 今ではさまざまな具材を入れてオリジナリティのあるものにしたり、おにぎらずなどが流行っています。 歴史などをみてみるとおにぎりが日本食の文化を発展を担ったとも考えることができるかもしれません。 おにぎりは時代とともに変化しながら、私たちの食を支えてくれています。