訳:野原の草がいっせいに靡く、なんと涼しげに。夏の陽が陰ると同時に、風が起こったようだ。
訳:夜が明けると、花咲く楝の葉繁みに隠れて蜩が鳴き始め――ふと鳴きやんでは、また声を継いで鳴く。
訳:遁世したら、どんな風に眺めるのだろうか。秋の夕べも、憂き世にあって眺めるからこそ憂鬱なのだ。
出家を果たした心境には、違って見えるのではないか。
訳:道案内を頼むよ、田上川の網代守。
網代にかかる氷魚(ひお)ではないが、もうずっと私は身を寄せるところとてないのだ。