室町時代 吉田兼好


 

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うちなびく草葉すずしく夏の日のかげろふままに風たちぬなり

    

訳:野原の草がいっせいに靡く、なんと涼しげに。夏の陽が陰ると同時に、風が起こったようだ。

 

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明けぬれば樗あふち花さく葉隠れにやめば次がるるひぐらしの声

    

訳:夜が明けると、花咲く楝の葉繁みに隠れて蜩が鳴き始め――ふと鳴きやんでは、また声を継いで鳴く。

 

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そむきてはいかなる方にながめまし秋の夕べもうき世にぞうきら

    

訳:遁世したら、どんな風に眺めるのだろうか。秋の夕べも、憂き世にあって眺めるからこそ憂鬱なのだ。
      出家を果たした心境には、違って見えるのではないか。

 

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しるべせよ田上たなかみ河のあじろもりひをへてわが身よる方もなし

    

訳:道案内を頼むよ、田上川の網代守。
      網代にかかる氷魚(ひお)ではないが、もうずっと私は身を寄せるところとてないのだ。

 


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