江戸時代 上田秋成


 

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我こそは面がはりすれ春霞いつも生駒の山に立ちけり

    

訳:私の方は去年の今と比べ面変わりしたけれども、春霞はいつもと変わりなく生駒の山に現れている。

 

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明けぬれば樗あふち花さく葉隠れにやめば次がるるひぐらしの声

    

訳:夜が明けると、花咲く楝の葉繁みに隠れて蜩が鳴き始め――ふと鳴きやんでは、また声を継いで鳴く。

 

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ねざむれば比良ひらの高峰たかねに月落ちて残る夜くらし志賀の海づら

    

訳:目が覚めると、比良の高嶺に月が沈んで、残りの夜は真暗である。山陰の志賀の湖面も黒々として――。

 

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(追儺)
年ごとにやらへど鬼のまうでくる都は人のすむべかりける

    

訳:毎年追い払うけれど、懲りずに鬼が参上する都
      ――余程良いところなのだろう。なるほど人が大勢住むのも尤もである。

 


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