訳:私の方は去年の今と比べ面変わりしたけれども、春霞はいつもと変わりなく生駒の山に現れている。
訳:夜が明けると、花咲く楝の葉繁みに隠れて蜩が鳴き始め――ふと鳴きやんでは、また声を継いで鳴く。
訳:目が覚めると、比良の高嶺に月が沈んで、残りの夜は真暗である。山陰の志賀の湖面も黒々として――。
訳:毎年追い払うけれど、懲りずに鬼が参上する都 ――余程良いところなのだろう。なるほど人が大勢住むのも尤もである。